個人事業主が法人掛け持ちする場合の事業内容とは?具体例と注意点を解説

個人事業主と法人の掛け持ちは可能か

近年、ビジネスの多様化や働き方改革の流れから、個人事業主が法人を設立し、それぞれの事業を掛け持ちするケースが増えています。
しかし、このような運営を行う際には、法律や税務、社会保険に関する正しい知識が不可欠です。

ここでは、個人事業主と法人を同時に運営することの可否やその条件、具体的な注意点を詳しく解説します。

法律上の制約について

日本において、個人事業主として事業を営む一方で、法人(株式会社や合同会社など)を設立・運営し、双方の事業を並行して行うことは法律上可能です。
特に商業登記法や会社法において、個人事業主であることと法人の代表者であることが同時に禁止されている規定はありません。

ただし、公務員や特定の業種(医師、建設業など)に従事している場合、兼業や法人設立に制限がかかることがあるため、該当する職業の方は特別な配慮が必要です。

項目個人事業主法人両立可否
法律上の制約開業届の提出で誰でも可登記・資本金等の要件あり原則、制約なし
許認可等業種ごとに必要な場合あり法人にも同様に許認可が必要一部業種は両立不可

税務上の留意点

個人事業主と法人の事業を掛け持ちする場合、それぞれ税務上の申告や納税義務が発生します

個人事業主は所得税・住民税、法人は法人税・法人住民税・法人事業税などが求められ、収支や経費計上も別々に管理する必要があります。

また、個人と法人で同じ業種または取引先が重複する場合、税務署が関連取引として注視する場合があるため、明確な区分と業務内容の分離が重要です。

項目個人事業主法人主な注意点
税目所得税・住民税法人税・法人住民税等申告・納税義務がそれぞれ発生
経費処理個人の口座、支出と連動法人口座、法人名義で管理経費の使い分けが必須

社会保険の取り扱い

社会保険の取り扱いについては、個人事業主と法人では加入義務や取扱いが大きく異なります。

  • 個人事業主の場合:国民健康保険・国民年金への加入が原則です。ただし、一定規模以上の従業員数(常時5人以上)になると社会保険の加入義務が発生する場合もあります。
  • 法人の場合:代表取締役1人でも原則として健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所となり、法人自体で社会保険に加入しなければなりません。

個人と法人を掛け持ちする場合は、どちらの立場で社会保険加入義務を満たすのか、また従業員がいる場合の対応や事業所単位での区分にも注意が必要です。

誤った保険加入や未加入はペナルティとなる場合がありますので、事前に社会保険労務士など専門家に相談することをおすすめします。

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個人事業主が法人を掛け持ちする主な理由

個人事業主が法人を掛け持ちで運営する理由には、税制上のメリットや事業規模の拡大、リスク分散などが挙げられます。

下記では代表的な理由を詳しく解説します。

節税対策としての活用

個人事業主と法人を使い分けることで、所得の分散や経費計上範囲の拡大など、節税効果を期待できます

例えば、法人化により給与所得控除の適用や退職金制度の導入が可能になり、課税所得そのものをコントロールしやすくなります。

個人事業主法人
所得税が累進課税法人税は一定税率
家族への給与は制限あり役員報酬や退職金の支給可能
事業専用資産でのみ経費化可能経費計上範囲が広い

このように、事業規模や所得額によっては、個人・法人を両立させることでより柔軟な税務戦略が立てられます。

事業拡大や信頼性向上

法人格を持つことで社会的信用力や事業取引の幅が飛躍的に向上します。

法人名義で銀行口座開設、資金調達、取引先拡大がしやすくなる点が大きなメリットです。
また、法人化を機に人材採用やオフィス設立などの事業拡大もスムーズに進めることができます。

日本では取引先や金融機関によっては個人事業より法人へ業務を依頼しやすいという傾向が根強く存在し、特にBtoB領域ではその傾向が顕著です。

事業の多角化やリスク分散

個人と法人でそれぞれ異なる分野の事業を展開することにより、経営リスクの分散と事業の多角化が可能となります。

運営形態リスク/メリット
個人事業主のみ全責任が個人に集中するため倒産リスクが高い
法人のみ新たな事業展開や多様なチャレンジがしやすいが、運営コストも増える
個人+法人掛け持ち本業と別軸のビジネス展開や万一の際のリスク分散ができる

例えば、IT系フリーランスとして個人事業を継続しつつ、法人としてコンサルティングや受託開発を行い、複数の収益源を確保するケースが多く見受けられます。
また、不動産や投資事業など、リスクプロフィールの異なる分野を法人で新たに始めることも有効です。

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個人事業主と法人で異なる事業内容の例

個人事業主と法人を同時に運営する場合、業種や事業モデルの選択によって、効果的な事業展開やリスク分散が可能です。

以下では、個人事業主と法人で異なる事業内容を設定する代表的なパターンについて具体例を挙げて解説します。

サービス業と小売業の兼業例

例えば、個人事業主として「ウェブコンサルティング業」を営みながら、法人では「ECサイト運営」を行うケースです。

それぞれの事業形態による収益構造や仕入れ・売上フローが異なるため、業種ごとの特性と役割分担が明確になります。

個人事業主法人ポイント
ウェブコンサルティング
(サービス業)
ECサイト運営・商品販売
(小売業)
提供サービスに直接的な関連性がなく、顧客層や販売チャネルを分けやすい

このように、サービス業と小売業を分けて事業を展開することで、売上の安定やリスクヘッジができます

フリーランスと会社経営のケース

個人事業主として「ライター」「デザイナー」「ITエンジニア」などフリーランス仕事を受託しつつ、法人では「クリエイター集団」「受託開発会社」「制作会社」など複数名でのプロジェクト運営を行うパターンが見られます。

個人事業主法人特徴・利点
個人名で受託業務(例:Webデザイン)法人名義で複数名体制の開発業務フリーランスの柔軟性と法人の信用力・規模拡大の両立が可能

発注先や事業規模に応じて、案件ごとに個人と法人を使い分けることで、経営効率を高めることができます。
特に法人では、雇用・外注によるチーム体制の構築がしやすくなります。

不動産・投資ビジネスと本業の両立例

個人事業主として「コンサルタント」「士業」など本業を営みながら、法人は「不動産管理会社」や「投資会社」として運用するパターンです。

個人事業主法人メリット
士業(税理士・行政書士など)
コンサルティング
不動産賃貸業(マンション管理等)
有価証券投資
収益源の分散や相続・事業承継対策、税負担軽減につなげやすい

例えば、税理士として個人で顧客対応をしつつ、法人で賃貸不動産の運用や有価証券による資産管理を行うことで、収益や資産の性格を明確に分離できます。

このように、個人事業主と法人で異なる事業内容を適切に設定すると、経営効率化やリスク分散、節税対策など多角的なメリットを得ることができます
ただし、それぞれの業種や具体的な兼業形態に応じて、税務・法務・社会保険の取り扱いも変わるため、十分な準備と専門家への相談が重要です。

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個人事業主が法人掛け持ちをする際の事業内容の設計ポイント

同一・類似事業内容の注意点

個人事業主と法人の双方で同じ、または似通った事業内容を展開する場合には、税務上の取り扱いや取引の実態が分かりやすく整理されているかに、十分な配慮が必要です。

例えば、請求書の発行主体がどちらになるのか、経費の範囲が重複していないかなど、取引先や税務署に対して透明性をもって管理することが重要です。
また、二重経理や利益移転といった不適切な会計処理は認められません。

意図せぬ税務リスクや指摘を受けることのないよう、明確な業務区分や契約書・発注書の整備が不可欠です。

用途別に法人と個人を分ける戦略

法人と個人事業主として、異なる事業目的・用途で明確に事業内容を分離することは実務上有効です。

例えば、個人名義ではフリーランスとしてコンサルティング業務を行い、法人名義ではインターネット通販事業や受託案件を展開することで、それぞれの強みを活かせます。

区分事業内容例分離のメリット
個人事業主講師業・コンサルティング・クリエイター業受付が柔軟、信用毀損リスクが法人に波及しない
法人WEB制作・小売業・不動産管理契約単価が大きい案件でも社会的信用が発揮できる

このように、顧客層や契約の規模、リスクの所在によって使い分ける設計が、組織の最適化につながります。

会計処理と資金管理の分別

個人事業主と法人との会計・資金が混同されないよう明確に区分することは、会計トラブルを防ぐ基本です。

それぞれの銀行口座、会計ソフトを分け、正確な帳簿記録を行うことが法律でも義務付けられています。
また、経費算入の基準も個人・法人で異なるため、 支出の証拠資料(領収書・契約書)の整理・保管方法についても細かくルールを設けて実施しましょう。

管理項目個人事業主法人
銀行口座個人口座を使用(屋号名義も可)法人口座を開設・使用(会社名義のみ)
会計帳簿青色申告・白色申告に準拠会社法・税法に基づき決算処理
経費処理生活費との明確な分別が必要会社の支出に限定し、個人の私用は不可

資金移動が生じる場合は、貸付金や役員報酬などの正当な会計処理を厳格に行い、私的流用とみなされないよう十分注意しましょう。

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個人事業主が法人を掛け持ちで運営する際の注意点

個人事業主が法人を同時に運営する場合、事業の効率化や節税、事業拡大など多くのメリットがありますが、運営形態の違いによる税務・社会保険・契約上のリスクやルールの違いを十分に把握し、慎重な運営管理が必要です。

この章では、掛け持ち運営時に特に注意すべきポイントを各項目ごとに解説します。

事業内容による税務署のチェックポイント

個人と法人、それぞれで行う事業が同一・類似している場合や、仕入・売上の流れが複雑な場合には、税務署から「実態の伴わない分散」や「節税目的の仮装」などを疑われやすくなります

事実に基づく分離が明確でない場合、税務調査時に説明責任を求められることがあります。

チェックポイント具体的な留意点
同一事業・類似事業個人・法人で収益や経費を恣意的に分散させていないか確認
取引・契約先の重複実態がある取引か、業務内容が明確に分離されているかチェック
資産の貸し借り設備・事務所・車両などを正しい契約・金額で貸借しているか

社会保険や年金加入の義務

法人を設立し、代表取締役や役員となった場合、たとえ従業員が自分ひとりでも健康保険や厚生年金など社会保険への加入が義務付けられるケースがあります(例:株式会社・合同会社)。

個人事業主としての国民健康保険・国民年金との違いを把握し、二重払いを避けるためにも事前の確認が不可欠です。

運営形態加入義務が発生する主な保険備考
個人事業主国民健康保険・国民年金原則、社会保険の加入義務なし
法人代表者健康保険・厚生年金保険法人の役員でも労務に従事していれば原則加入

名義や契約上の注意点

個人と法人の名義を混同してしまうと、税務上だけでなく、契約や就業の法的効力が失われるリスクがあります。

契約書や請求書、各種申請書類は、必ず実際の主体(個人か法人)名義で正確に作成し分別管理することが必要です。
また、肩書や商号の使用も法的責任の所在に影響します。

無限責任と有限責任の違い

個人事業主は事業の債務に対して「無限責任」を負い、個人資産が差し押さえ対象となり得ます

一方で、法人は「有限責任」(出資範囲内の責任)となるため、リスク分散が可能です。

掛け持ちの場合は、この責任の違いがトラブル発生時や倒産時に重大な影響を与えることを十分理解しておく必要があります。

運営形態責任の範囲備考
個人事業主無限責任(全財産が対象)事業債務が個人資産にまで及ぶ
法人(株式会社等)有限責任(出資額まで)代表者個人の財産は原則対象外
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個人事業主と法人を掛け持ちした場合によくある質問Q&A

質問回答
副業として法人運営は可能か個人事業主として本業を持ちながら、副業として法人を設立・運営することは法律上可能です。ただし、従業員として勤務している会社に副業禁止規定がある場合は就業規則に従う必要があります。また、法人設立登記や各種届出を適切に行い、税務上も「副業」ではなく「事業」として適正な申告が求められます。
青色申告と法人決算の違いは?個人事業主の青色申告と法人の決算では、会計処理や税申告のルールが異なります。
個人事業主の青色申告は、複式簿記をもとに確定申告書を税務署に提出しますが、法人は事業年度ごとに決算書類を作成し、法人税申告を行います。納税額の計算方法や控除、経費計上の考え方なども異なるため、両者を掛け持ちする場合は管理を分けておくことが重要です。
許認可が必要なケースは?業種によっては、個人と法人それぞれで許認可が必要な場合があります。たとえば、飲食業、小売業、建設業、宅建業などは、個人事業と法人が行う場合で許可の名義や申請先が異なります。法人化した際は、新たに法人名義での許可や登録を得る必要がある場合があるため、行政機関のガイドラインを事前に確認することが大切です。
個人と法人で事業内容が重複した場合のリスクは?同一・類似の事業内容を個人と法人で並行して行うと、税務署の注意対象になることがあります。たとえば、収益の分散や経費の不正計上とみなされると、税務調査で指摘される場合があります。個人と法人の事業は明確に分け、資金や取引の流れも別管理にすることが、リスク回避のポイントです。

社会保険・厚生年金の加入義務について

法人を設立すると、事業の規模や従業員数にかかわらず社会保険(健康保険・厚生年金)の加入義務があります。
個人事業主の場合、常時5人以上の従業員を雇う一部業種以外は社会保険の加入義務はありませんが、法人の代表者も「役員報酬」を受け取る場合は被保険者となります。

個人と法人両方を掛け持ちする場合でも、法人側での社会保険加入は原則必要になるため、保険料や手続きに注意しましょう。

それぞれの会計処理と税金の納期に関する注意点

個人事業と法人では決算期や納税期日が異なります。個人事業主は毎年1月1日~12月31日が事業年度となり、翌年3月15日までに確定申告が必要です。
一方、法人は登記時に自由に決算期を設定でき、決算日の2か月以内に法人税申告・納付が必要です。

二重での記帳、書類管理、納税準備が必要なため、スケジュール管理や会計ソフトの活用が有効です。

銀行口座や契約名義の使い分けは?

法人設立後は、銀行口座、各種契約などは法人名義で管理すべきです。

個人事業の事業用口座と法人の口座は分離し、売上・経費の入出金を混在させないようにしましょう。
名義の使い分けが曖昧だと、税務処理や法的責任の所在が不明確になりやすいため、個人と法人で明確に区分した運用が求められます。

まとめ

個人事業主が法人を掛け持ちする場合、法律や税務・社会保険の制約を正しく理解し、事業内容や資金の分別、責任の範囲を明確にすることが重要です。

節税や事業拡大のメリットを活かすには、用途やリスクも考慮して計画的に運営しましょう。

経理や事業設計に専門家のサポートを活用することもおすすめです。

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やりたいと思ったら挑戦したらよいと思います。
起業は厳しい状況の時もありますし、
今は先が見えないので不安も頭をよぎる事もあるかもしれませんが、
一度きりの人生、
自分の人生を後悔しないようにしましょう!